リハビリ5週目は、新しいことに挑戦した週でもあり、義足に負の感情が芽生えた週でもありました。
ヒールを履いてみたり、階段の上り下りができるようになったり、義足で出来ることの幅が広がって嬉しいと思うことが増えました。
しかしそれと同時に、自分自身に必要以上にプレッシャーをかけすぎて、毎日リハビリに取り組む生活がしんどいと思うようになってしまいました。
リハビリが順調に進んでいって嬉しいと思う反面、もっともっとうまくならないといけないという自分への過度な期待から、気持ちのアップダウンが生まれてしまったのだと思います。
いつも前を向いて前進しているわけではなくて、弱音を吐きたいときもある
これがリハビリを始めて1カ月に抱いたリアルな気持ちです。
リハビリの内容だけではなくて、そんな気持ちも素直に綴っているので、参考にしてもらえたら嬉しいです。
膝折れを防ぐ方法を学ぶ
私はこれまで一度も膝折れを経験したことがありません。
膝折れをしないように細心の注意を払って歩いているからだと思います。
リハビリ中に、たまたま外来に訪れていた大腿義足の方からアドバイスをいくつか頂いたのですが、その中でも印象に残っているアドバイスがこちらです。
リハビリ中に何度も転んで、膝折れの感覚を掴みなさい
膝折れしないように気を付けるのではなくて、むしろ転びなさい?
このアドバイス、一見矛盾しているような気がしますが、実は理にかなっています。
何度も膝折れを経験することで、膝折れしそうになる瞬間が自分で分かるようになるそうです。また、膝折れへの恐怖心も克服できるようになるとのことでした。
そうすると、瞬間的に膝を伸ばす動きで膝からガクッと折れるのを防ぐことができるようになります。
膝折れしかけたときに軽くジャンプしながら膝を伸ばすといいみたい。
その感覚を養うという意味でも、今のうちに転んでおいたほうがいいよと教えてもらいました。
新しいことに挑戦してみる:ヒール
もう一度ヒールで歩きたい
リハビリ当初から担当の義肢装具士の方に伝えていたことがあります。
ヒールを履いて歩けるようになりたい
切断を決断したその日から、ヒールで歩ける日がくることを心待ちにしていました。
人工関節を使用していた間は、下垂足と言って、つま先を上げることが出来ない障害を持っていたので、基本的にはヒールしか履くことができませんでした。
お気に入りの靴は全部ヒールだから、義足になってもヒールを履き続けたらいいなとずっと思っていたんだよね。
ヒール姿の義足の女性をインスタグラムで見たことがあったので、私も履いてみたいとお願いしてみました。
ヒール用の足部
私が試着したヒール用の足部は、カレッジパークインダストリー社製のアクセントです。
角度調節ができるボタンがくるぶし辺りにあって、それを押すことでつま先を下げることができます。
5センチ程度のヒールであれば対応可能だそうです。
この足部はスポンジの部分が比較的薄い作りになっているので、タイトなパンプスなども靴ベラを使えば無理なく履くことができます。
6.5センチのパンプスにも対応
私が試したのは6.5センチヒールのパンプス2足です。
ヒールを履いたときの正面と横からのカットです。
義足側も違和感ないですよね。
写真のようにショートパンツとヒールを一緒に履くことはないと思うので、基本的には足先だけが見えるようになると思います。
スニーカーのようなフラットな靴よりもヒールは安定感が悪いので、低いヒールから練習するほうがよさそうです。
ヒールで歩いてみた感想
ヒールの踵にかなりの負担がかかっているのを感じます。
ヒール一点で体重を支えているから、ヒールがすぐに壊れそう。
安定感も悪いので、平行棒を掴まりながらでないと怖くて歩けないというのが率直な感想です。
ヒールが3センチ程度であれば、練習さえすれば大丈夫だと思います。
新しいことに挑戦してみる:階段
リハビリ室にある階段で上り下りの練習をしました。
リハ室の階段の高さは3種類あって、家の中の階段や駅の階段など、高さの異なる階段にも対応できるようになっています。
大腿義足の場合は、上りは健足、下りは義足から一段ずつ上り下りします。
膝継手の性能によっては両足を交互に使って上り下りができるそうですが、それができるのは限られた人だけです。
人工関節の頃も一段ずつ上り下りしていたので、要領をつかむことはさほど難しくはありませんでした。
しかし、唯一の懸念事項は、義足が床を離れた瞬間に多少痛みが伴うことです。
断端が重力で下に引っ張られるので、階段を上る度にストレスを感じそうです。
気持ちのスランプに陥る
ここまで順調にリハビリが進んでいましたが、5週目にして気持ちの面で大きな壁にぶち当たってしまいました。
毎日欠かさず義足を履いて歩くのがなぜか急にしんどくなって、リハビリが終わった後に無性に虚無感に襲われることがありました。
リハ中はそんな雰囲気は一切出してはいなかったけど、部屋に帰ってからため息ばっかりついてたな。
朝に足が浮腫んでソケットに足が入らない日々が続いたり、歩き方のフォームを改善していても何をどう修正したらいいか分からなくて、リハビリに限界を感じてしまっていたようです。
小さな障害が積もりに積もって気持ちが落ち込んでしまいました。
前を向いて頑張らないと。うまく歩けるようにならないと。
といつの間にか自分自身にプレッシャーをかけ過ぎていたのも原因かもしれません。
切断という大きな出来事の後なので、気持ちの浮き沈みがあるのは当然といえば当然です。
リハビリしている人は常に前向きで頑張っていると思われがちですが、実はそうではない現実もあります。
これからリハビリを始める人、今リハビリに取り組んでいる人に一番伝えたいのは、落ち込む時期があってもいい、ツライと弱音を吐いてもいい、ということです。
リハビリの成果が出るのには時間がかかるので「一進一退を繰り返しながら、ゆっくり前に進んでいけばいいや」ぐらいに気楽にリハビリに向き合う心意気も大事だと思います。
理学療法士や一緒にリハビリしている人と気持ちを共有することで気持ちが軽くなったので、会話をすることも息抜きになると思います。
5週目の歩行の様子
まとめ
5週目は新しいことを始められて嬉しいと思う反面、リハビリがしんどいと感じる時間が多く、気持ちの面で波がある1週間でした。
順調にリハビリが進んで毎日成長を実感できると思う一方で、もっともっと頑張らないといけないと自分で自分を追い詰めていた気がします。
ある程度フォームが出来上がった後に、それ以上綺麗に歩くには何をどう修正したらいいのか分からなくなってしまって、八方塞がりだと感じてしまう機会が多かったです。
そういうことは誰にでも起こりうると思います。
あまり気負わずに、肩の力を抜くことが大事なのかもしれないですね。自戒を込めて書いています。
気持ちを入れ替えて6週目のリハビリに臨みたいと思います。
6週目のリハビリの様子もチェックしてみてください。