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【切断に至った経緯】人工膝関節の深部感染の発生原因と症状、カナダでの初期治療について

こんにちは!義足ユーザーのこぶちゃんです!

さて、「切断に至った経緯」中編です。人工関節の深部感染の原因と症状、カナダで受けた初期治療についてシェアします。

骨肉腫の発症から5年間は再発や肺への転移を一番心配していましたが、5年以降はもっぱら人工膝関節の緩みや感染を気にするようになりました。 「人工膝関節に感染が起きたら治療が長期化するから気をつけてね」と これまでに何度も主治医から釘を刺されていたからです。

人工膝関節を入れている人の半数は緩みや感染が原因で 10年以内に何らかの手術を受けているそうですが、中でも一番恐れていた感染が起きてしまいました。 まさかまさかの出来事でした。

その感染のきっかけになった出来事が、真夏のヨーロッパでの一人旅です。「術後10年の節目の年だから、何か思い出に残ることがしたい!時間もあるし、バックパッカーで3週間ヨーロッパに行ってみよう!」と思い立って、一人で旅行に行くことにしました。(イタリアで両親と合流するプランでした)

足にサポーターを巻いた状態で重い荷物を持ちながら3~4日間隔で国を移動していたのですが、旅行も後半に差し掛かったころに傷口に嫌な痛みを感じました。こういう時の嫌な予感って的中するんですよね。

この日を境に足の状態が日に日に悪化していきました。そんな中でも人工関節が感染してしまったんだと事態の深刻さに気がついたのはカナダに戻ってからです。感染の怖さは十分に分かっていたはずなのに、旅行の楽しさから気持ちが緩んでしまったのかもしれません。

まさに、後悔先に立たずです。

ここから長い長い闘病生活が始まります。どんな治療を受けてきたのか、その時の感情も交えながら経験談をお伝えできたらと思います。

人工膝関節に感染の疑い

脛に熱感と腫れの症状

旅のスタートはドイツから!ホステルの前でパシャリ。

人工膝関節に炎症が見られ始めたのは2018年7月頃です。3週間にわたって一人でヨーロッパを 旅行していた時のことです。その年は熱波がヨーロッパ全域を襲っていて、日中は35℃を超える猛暑日が続いていました。

イタリアで親と合流して、旅行も終盤に差しかかった頃、人工膝関節をいれた左足の脛の辺りに鈍い痛みと全身に倦怠感を覚えました。痛みがある場所を確認してみると、脛全体に赤みと腫脹があったので、これはおかしいと思って慌てて現地の救急クリニックで診てもらうことにしました。

水ぶくれぐらいの大きさに腫れた部分を切開すると、中からドロッとした黄色い膿がでてきました。人工関節が入っていることを説明すると、医師の顔が急に険しくなったのを覚えています。細菌に感染している疑いがあるということで、ひとまず抗生剤を数日分処方してもらい様子をみることにしました。

こぶちゃん
こぶちゃん

この時は「抗生剤で治るだろう。これまでも似たような症状が出てたこともあったから、そんなに大したことはないかも。カナダに戻ったら念のためもう一度医師に診てもらおう」と思っていたぐらいで、事態をそこまで重く受け止めてはいなかったかな。

ただ、受診直後に熱も出始めたので慌てて抗生剤を飲みました。

考えられる感染の原因

バックパッカーの旅は重いリュックを常に背中に背負いながら移動します。キャリーケースは使いません。重い荷物を持ちながら長距離を歩くと事前に分かっていたので、人工膝関節に負担をかけないためにも、厚手の布地のサポーターを膝から脛あたりまで巻いていました。

外に出れば汗がジトッとでるような猛暑日の中歩き続けていたので、一日の終わりにはサポーターは汗でぐっしょりと濡れていました。不衛生な状態で歩き続けるうちにサポーター内で菌が繁殖し、皮下組織の少ない脛の辺りから感染してしまったのではないかと思います。

それぐらいしか思い当たる節がありませんが、はっきりとした感染経路は分かっていません。

カナダでの初期治療

地元の整形外科を受診

旅行先からカナダに戻った後に、念のために地元の整形外科で脛の状態を診てもらうことにしました。処方してもらっていた抗生剤の効果もあって、腫れと膿の症状は治まっていたので深刻な状況は脱したんだなと内心ホッとしていました。

抗生剤は2週間服用し続けた方がいいとの医師の診断のもと、薬の服用を続けていたのですが、薬の服用を終える直前に状況が一変しました。

旅行先で自覚した初期症状と似たような腫れと熱感、倦怠感が再燃してしまったのです。

救急外来で診てもらうことに

お世話になった救急

症状が当初よりも悪化しているようだったので、別のクリニックで診てもらって紹介状を持って救急外来に行きました。カナダでは普通に救急で4~5時間待たされます。

待つことおよそ4時間。整形外科医に人工膝関節が入っていること、これまでの症状と発症してからの期間を説明すると、「人工膝関節の深部まで感染している可能性が高い。膿を培養して細菌を特定してみるけれど、抗生剤の投与は一時しのぎでしかない。外科的手術は避けられないと思う。カナダで手術をするなら切断以外の道はないでしょう。この状況はとても厳しいと思って覚悟してください。」と言われました。

一瞬頭が真っ白になりました。切断という言葉を聞いた瞬間、自然とポタポタと涙が溢れて診察室で泣き崩れました。青天の霹靂とはまさにこのことですよね。

この日はどうやって家に戻ったのかもよく覚えてはいません。ただ呆然としていたと思います。

「切断だけはしたくない」

その気持ち一心で日本の主治医に連絡をとると、「一度戻っておいで。治療をしよう。」と言ってもらえたので、日本に一時帰国して治療を受けることに決めました。秋学期開始まで2週間という時間のない中での帰国でした。

日本に一時帰国し、主治医と相談

日本では人工膝関節に感染が見られる場合、切断以外の選択肢も提示してもらうことができます。

それは洗浄と人工関節の抜去/再置換です。

手術(デブリードマンと洗浄)

帰国後すぐに足のX線と血液検査を受けましたが、幸い感染の炎症反応を示す値(CRP)も落ち着いていて、レントゲンにも異常は見られませんでした。

抗生剤を一時的に止める形で感染しているかもう一度確認しましたが、人工膝関節を抜去するほどの腫れや赤みがないということで、感染源の切除と洗浄手術を行うことになりました。デブリードマンとは、壊死した組織を除去する施術です。

こぶちゃん
こぶちゃん

抗生剤を飲み続けていた時は「治ったんじゃないかな?」って思うぐらい症状が落ち着いたんだよね。だから一時的に抗生剤をやめて症状を見た時もすぐに腫れや赤みは見られなかったよ。

大きな手術をせずに済んだ!切断は回避できそう!とホッとしたのを覚えています。

術後2週間を目途にカナダへ再渡航

この時の菌の培養結果は陰性で、菌の特定までには至りませんでした。術後の経過も至って順調だったので、洗浄で感染が治まったと思い込んでいました。

洗浄だけで炎症が治まるのが最高のシナリオ。

感染が再燃するのが最悪のシナリオ。

そう主治医には言われてはいましたが、新学期までのタイムリミットが近づいていたので、主治医の忠告を押し切る形でリスクを承知でカナダに戻ることにしました。

こぶちゃん
こぶちゃん

完全に治るまで、最低2、3カ月日本で様子を見るべきだったのかな?大学の授業についていくのって凄く大変で、後れを取りたくなかったから帰国を早めてしまったんだよね。今振り返ると、ここが運命の分かれ道だったのかなって思う。

カナダで治療を再開

カナダ到着後2週間で感染の再燃

カナダに戻って2週間後の患部の様子

カナダの生活を再開させてから2週間も経たないうちに、最悪のシナリオと言われていた感染症状が再燃してしまいました。脛にある手術痕の辺りがジクジクと痛んで、その周辺がプクッと赤く膨れだしました。

こぶちゃん
こぶちゃん

一番恐れていた事態になっちゃったんだ...って思ったよね。授業も始まってるから、どうやって対処するのが一番ベストなのか妙に冷静に考えてた気がするな。

すぐに日本に再帰国することができない状況だったので、カナダで出来る限りの治療を受けることにしました。

地元の感染症医によるフォローアップ

カナダで集中的に治療を受けると決めてから、親身になってサポートしてくださったのが感染症専門医です。私が置かれている状況にも理解を示してくれて、負担が少なくなるような治療方針を提示してくれたり、辛い気持ちにも寄り添ってくれるような優しい女性ドクターでした。

少なくとも3、4カ月は日本に戻れないことを伝えると、感染症の症状の悪化による敗血症のリスクを下げるために、6週間の抗生剤の点滴を毎日受ける必要があるという説明を受けました。

起炎菌が特定されていなかったので、幅広い細菌に効果がある抗生剤(キュビシンとビブラマイシン)を使用しました。

カナダで6週間の点滴静脈注射

自宅で点滴投与を行う

毎日点滴をするとなると入院?と思う方もいるでしょう。カナダでは、軽症者や点滴の管理ができる人には自宅で点滴治療をしてもらうことが積極的に推進されています。

私のように毎日抗生剤の点滴が必要な人が外来に来て治療を受けることは、非常に珍しいそうです。

当初は時間を見つけて6週間毎日病院に通う予定でしたが、時間的にも体力的にも難しいとの判断から自宅での治療に切り替えました。

静脈ポートを留置する

カナダの処置室

毎日自分で注射を打つわけにはいかないので、静脈ポートを看護師に入れてもらいました。感染予防のために防護服に身を包んだ看護師2名が部屋に来てポートをいれようとしてくれたのですが、私の血管が細すぎてなかなか入らなくて悪戦苦闘している様子でした(笑)

私が緊張していたのを察したのか、応援にきたベテラン男性看護師には「君、どこから来たの?日本?夏休みに旅行に行きたいと思っていたんだよ」と声をかけてもらいました。フレンドリーなカナダ人らしい対応ですよね。

施術自体は2時間程度で終わって痛みもなかったので、そのまま帰宅しました。

点滴台の準備と薬剤の調達、点滴の針の交換をする

点滴台はカナダ赤十字社から2カ月間無料で借りることができました。点滴をする上で気をつけなければいけない液漏れや点滴を落とすスピードなど、細かいチェックポイントは事前に看護師さんに丁寧に教えてもらったので、点滴に対する不安はありませんでした。

こぶちゃん
こぶちゃん

点滴マニュアルももらったし、直接デモンストレーションもしてもらったよ。思っていたよりも簡単にできたよ。

分からないことや問題が起きたらすぐに看護師に連絡がとれるような体制も整っていたので、安心して治療を受けることができました。また、定期的に近くのクリニックで点滴の針のチェックや包帯の交換をしてもらえたので、バックアップ体制は充実していたと思います。

薬剤は1日ごとに病院の薬剤部に取りにいきました。その日に使わない分は冷蔵庫で保存しておきます。薬剤には使用期限日が記載されていたので、それに合わせて薬剤を管理しました。

こぶちゃん
こぶちゃん

6週間もほぼ毎日病院に行くのは結構しんどかったかな。でも毎日通うことを考えたら、自宅で行う方が楽だと思ったよ。

6週間の治療の効果

6週間の治療の間にも、2週間に一度の頻度で炎症反応(CRP)の値をチェックします。この値が落ち着いていれば、抗生剤に一定の効果がみられているということです。

幸い6週間の治療を終える頃には、薬を飲んでいる状態であればCRPが正常値まで下がりました。

しかし感染症のドクターは「これはあくまでも一時的な処置で、どこかの時点でやめないと、細菌が薬剤耐性を持ってしまい抑えられなくなる可能性がある。年齢を考えると、一生抗生剤を服用する選択肢は現実的ではない」と、この治療の限界について何度も口にされていました。

私自身も異国の地で治療を続けながら生活することに限界を感じ始めていたので、家もすべて引き払って、日本に帰って治療に本格的に専念することに決めました。

まとめ

人工膝関節が感染してしまうと、治療は長引いてしまいます。一度人工物に細菌が付着すると、抗生剤だけでは菌を完全に死滅させることが難しくなるからです。

私は初期治療を怠ってしまったために、感染が関節の奥深くまで広がってしまい、取り返しのつかないことになってしまいました。感染が広がってしまうと、医療チームのサポートがあったとしても、人工膝関節の温存ができる可能性はどんどん下がっていきます。

つまり、初期対応でいかに感染拡大を防ぐことができるかがとても大切だということですそうは言っても、いつも最善の行動ができるとは限りません。義足となった今は、当時の自分に「ベストを尽くしたね」と労いの言葉をかけたいです。

日本に帰国してから本格的な治療が始まったのですが、その話は次の章でシェアしたいと思います。

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